聞かざるべし
■バルセロナ空港に着陸したとき、まばゆいばかりの夕陽が飛行機の窓から差し込んできた。天気予報では曇りとなっていたが、バルセロナの空に見えた雲はわずかばかり。オランダのスキポール空港を経由した成田からの旅は、あっけないほど問題なく完結したのだった。
■それは、オランダまで同席した親子との出会いが嬉しかったからだと思う。社会人になったあと、スペインに留学した娘は、この3月に再就職する。初出勤を前に、娘は母親を旅行に誘った。母の足腰がまだしっかりしているうちに、自分が留学していたスペインを案内したかった、という。母親は二年前に亡くした連れ合いとの生活に訣別し、新しい生き方を模索しなければいけない、と言っていた。私は早く逝ってしまった両親を想い、こんな風に一緒に旅行をできなかった後悔の念が再燃し、この親子とつい話し込んでしまったのだった。
■オランダを経由しベルギーにむかうという親子と、スキポール空港で別れたが、別れしなに、私は簡単な自己紹介をした。とはいえ、相手のお名前を聞くことは女性に対して不躾(ぶしつけ)に思われ、親子のお名前は聞かないまま別れた。縁があれば、またどこぞで会うかもしれぬ。
■さて、旅は始まったばかりだ。
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