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2006年8月 8日 (火)

京都の暑い夏

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一流のホテル。この写真だけで何というホテルかを言い当てることができるとしたら、かなりのホテル通だろう。この写真は、『京都ホテルオークラ』の客室フロア吹き抜け部分。設備も接客も前日に宿泊した「掛川なんたらホテル」とは別次元にある。

京都にやってきた目的は三つある。まず、友人の妹さんが弾くチェロとピアノのコンサートを聴くこと。『カフェ・ドゥ・ガウディ』のマスター鈴木政勝氏に会うこと。そして、京都人たちと共にシャレで京都観光をすることだ。

演奏者たち二人にとっては少々不満が残ったらしいが、コンサートは素晴らしかった。楽器から発する振動を生で受けた体は、その夜、深く長く心地よい眠りへ落ちた。

その翌日、観光ミニツアーが決行された。参加者は六名。なぜかパリで活動しているチェロ奏者と二人のピアニスト、そして友人Rと相方と私を含めた六名は、友人の両親を含めた八名でホテル十八階にあるレストランにてゆるりと朝食をとると、連れ立って灼熱の京都へ出陣したのだった。ありがたいことに、ホテルの地下にもぐると地下鉄の駅がある。最初の目的地はそこから三駅ほど先。地上に出ると、熱気でめまいがするほどだった。いきなり汗が噴き出す。目の前にトンネルがあった。

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トンネルを抜けると、そこは…。

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立派なかやぶき屋根の家屋が見えた。
その前の広い敷地は駐車場。
アラビア数字と白線がミスマッチ。

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ここは、南禅寺。

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とにかく歩いて大汗をかこうじゃないか、と、歩く。

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レンガ造りの水道橋までくると、ひんやりする。

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南禅寺を散策するも、気になる水道橋…。

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水道橋に戻り、その上に登る。すると、水が勢いよく流れていた。すごい! 今でもちゃんと機能してるじゃないか! 「上流へどうぞ」と、ささやく声が聞こえてくる。そうなればしかたない。上流へ登るしかないだろう。というわけで、運河にそって上流へ、上流へと歩く。歩くに連れて、山奥へ連れ行かれる不安もつのる。

果てさて、行き着いた先は…。

なんと、発電所だった。景観をそこねぬよう、茶色に彩色してある。見えないはずだ。感心してはみたものの、どこから降りればよいのか分からない。

周りをよ~く見てみると、発電所から山すそへ一直線に走っているレールがある。昔はここから京の都まで、琵琶湖からの船をトロッコに乗せて運んだ、というではないか。山を駆け下りるトロッコ鉄道に沿って、ゆるやかに山を降りる階段が見える。この階段を降りていけば、なんとかなるようだ。我々六人組は、そうして下界に帰還したのだった。

とはいえ、帰還した場所は…。

最初にくぐったあのトンネルの出口ではないか。もうすぐ上がりだという期待感いっぱいのとき、サイコロを振って「ふりだしに戻る」にはまってしまった「すごろく」のような気分。それに、そこいら一帯にはなぜだか昔懐かしい「肥溜め」の芳しい臭いに満ち満ちており、徒労感と臭さのダブルパンチ。「なあんだ、山を一周してきただけかい」と、ガックリとしおれてしまっただった。

とはいえ、水道橋のことなら、いっぱしのうんちくを語れる充実感で満たされてもいた。

ここで京育ちとばかり思っていた東京育ちのM嬢と別れ、五人衆は銀閣へ向かった。とはいえ、あまりの暑さにあの充実感は簡単に吹き飛ばされ、「なんたらの道」を歩く気力も粉々に飛び散り、「ヘイ、タクシー!」と、あいなったのだった。

それでも軽く散策し、非常にリーズナブルな京懐石を満喫し、銀閣への参堂を登ったのでありました、とさ。

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銀閣へ向かう人たち。

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しょぼい銀閣は日本家屋の原点なのだ。
見れば見るほど、随所に感嘆すべきところを発見す。
銀閣はしょぼくても、やはり、すごい。

最後は、アートより食い気である。
京都の胃袋、錦商店街へ向かった。

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錦市場でフラフラといろいろと買い物をする。
そして、最後はかき氷。

「陽に当たるとよく眠る」というが、まさに名言だろう。京都から品川まで熟睡。名古屋を通り過ぎたことさえ、まったく記憶にない。

京都の夏は本当に刺激的だった。体を揺さぶるピアノとチェロの音響。理智的な言葉を彩る感性を育んできた両親の存在。体の隅々まで染み渡るカフェ・ドゥ・ガウディの深煎りカフェ。京料理の微妙な味わい。緑を通して差し込んでくる日差しのまぶしい陽光と陰影。この前の戦(いくさ)は応仁の乱だった、という京の都の分厚い文化。何代もの世代で引き継がれ生き続けるものと、強烈な夏の暑さで爆発的に醗酵するものにはさまれ、夢見心地に過ごした京都の夏だった。

本当に暑い夏の一日だった。

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コメント

お帰りなさいませ。
銀閣寺、いいですね。小さい頃によく父に連れて行かれたらしく、写真がたくさんあったなぁ。行ってみたくなりました。

「理智的な言葉」って、リッちゃん的な言葉ってことですよね~(^m^)

投稿: あーちゃん | 2006年8月 8日 (火) 08時38分

お帰りなさい。
あ、インクラインだ。

投稿: 荻島 | 2006年8月 8日 (火) 16時32分

あーちゃん
 行って参りましたよ、京都に。リッちゃん的な言葉… 当たりです。妹さんのアヤちゃんのチェロには酔いましたよ。楽器の振動に敏感なのかなあ、その夜は体がぐったりしてしまい、ホテルに戻るなりバタンキュー(死語か?)。グッスリと朝まで眠ってしまいました、とさ。
 銀閣はホントにしょぼかったです。でも、じっと見てると、とてもなつかしい感じがわいてきて落ち着いてくるし、こんな家屋に住みたいって気持ちがわいてくるんですよね。なんか不思議。

荻島さん
 掛川経由で行ってまいりました。荻島さんゆかりの地ばかりですね、そういえば。「インクライン」だっ、とすぐに分かるところもさすがですねえ。あっしは知らなかったんですよ、お恥ずかしながら。まあ、何も知識のない状態で自分がどう感じるかを確かめるのも楽しいことではあります。今回、京都に足を運んでみて、この独特の土地のことをじっくり知りたくなりました。

投稿: kawa | 2006年8月 8日 (火) 22時27分

>「インクライン」だっ、とすぐに分かる

二枚目の写真でだいたいどこだかわかる(笑)。泊まったのは三条京阪ですか。あそこはホテルいっぱいあるからね。中心地にも近いし。南禅寺は豆腐料理が有名だけど、三千円以上して、土地のもんはあほらしいからようくわん(笑)。近くに安くてすっごいうまい定食屋があります。家庭料理みたいなの。私の場合、観光名所はほとんどまわらないので(笑)。銀閣寺は入ったことないけど、その裏山の大文字山はてっぺんまで登った。ここでは実に不思議な体験をしました。
京都はいいでしょ(笑)。今も友人が何人か行ってて、今日も電話があった。もうすぐ大文字焼きですね。夏はきついけど京都はほぼ平らだから自転車でまわるといいですよ。私は高野からカフェドガウディまで行って帰ってきたけど、延々北上するのはかなりきつい。ゆるいけどずっと坂なんだなあ。

掛川のグランドホテルの一階に変な喫茶店なかった?(笑)
掛川は今、「功名が辻」の催し物やってるんじゃないかな、お城で。
駅のこれしか処で売ってる緑色のわさび漬けが絶品です。あとイルカベーコン!(別に海豚の肉で作ってるわけじゃない(笑))。入鹿ベーコンだ。
って食べ物の話が多いな(笑)。

投稿: 荻島 | 2006年8月10日 (木) 02時34分

荻島さん
 やっぱり地元民じゃないと、いろいろと便が良くないわ。
 泊まったホテルは「京都ホテルオークラ」。御池通と河原町通に面していて、市役所の隣り。反対側に鴨川が見えとりました。地下は市役所前駅に直通で、電車を使って移動するには便利な場所でしたけどね。京都をどこまで知りたいかで違ってくると思うけど、観光じゃなく長く住んでみたいと思いましたよ。
 掛川で泊まったのは「グランドホテル」じゃなく、駅から少し離れたところにあるビジネスホテル風のホテル(笑)でした。その日は花火大会だったので、三宅シェフが「掛川グランドホテル」を予約しようとしたんだけど、ダメだったみたい。駅前では「功名が辻」に関連した商材が並んでましたよ。

投稿: kawa | 2006年8月11日 (金) 07時06分

ああ、市役所前に地下鉄通ったんですね。こんなすごいホテルあったかな?
住むなら北東の方がいいです(でも艮=鬼門だな(笑))。死ぬまでに一回は絶対住んでみたい。河原町四条あたりはもうだいぶ変わってしまって、なんだかなぁの状態です。
モロ君も立ち退きで太秦に引っ越してしまって、左京の宿はもうない。

投稿: 荻島 | 2006年8月11日 (金) 21時45分

>こんなすごいホテルあったかな?

 ホテルはリニューアルして変わるからね。特に内装は。

 荻島さんと京都で落ち合い、モロさんと会ったのは、もう十五年ほど前になりますね。彼は太秦に引越したんですか。
 土地が持つ力を信じて、あっしも東京ではひと通り引越してきたんだけど、自分が日本人として欠落させてしまったことさえ感じることができず、自分が日本人として定まらぬまま人生を終えてしまうのかと思うと、残念です。ただ、何かが欠落していることは感じてる。
 腰を落ち着けて生活することで、その何かが少し見えるかもしれない。京都にはそれを感じました。いや、いっそ長崎に戻って、出直すのがいいのかもしれません。

投稿: kawa | 2006年8月12日 (土) 13時39分

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