« 53円の幸福 | トップページ | 毎日三か月 »

2007年6月 4日 (月)

増上寺の線香花火

夏を先取りした花火大会が行われた。

ときは先週の土曜日。ところは芝、増上寺の境内。花火とはいっても、線香花火である。午後5時過ぎ、まだまだ日がかげり始める前のたそがれどき。増上寺の三門前に子供の小さな手を引いた親たちが集まってきた。

20070602_013tc

日本で発売されている家庭用花火のほとんどは中国製だという。線香花火も例外ではない。火が花咲けば、花火なんてそれでいい、と思う人ばかりではないはずだ。とはいえ、和の趣を実践しようとする人もほとんどいない。それが、今の日本……。

ギンザ・コマツ』が勇気を振り絞り手を挙げた。この6月1日から「和の扉」と称し「線香花火」を売り出した。とはいえ、銀座に店舗を構える老舗にとっては、採算がとれなければ商品として成り立たない現実問題がある。「和の線香花火」はそれなりの値段になっている。

20070602_025tc

20070602_027tc2_1

20070602_031c1

静かな線香花火大会の最後にサプライズが仕込まれてあった。増上寺ではありえない仕掛け花火が夜空を飾った。三百人ほどの参加者たちは皆驚いていた。消防車が2台も待機していたわけが分かった。

20070602_042c2

20070602_046c

20070602_044_1c3

今年はじめのことである。ニューヨークから十年ぶりに帰ったばかりの一人の女性がこの企画に目を付けた。詳しい事情は知らぬが、販売促進を依頼されたらしい。

彼女の実家は歌舞伎の家元。襲名できぬ女性であっても、幼い頃から“和”の厳しい教育を受けるのが習いだ。十代の多感な頃、彼女は渡米して高校を卒業し、里帰りする。日本の大学に在籍したが、すぐに退学し米で教育を受け、ニューヨークで職を得た。そして、十年近くの時をへて、思うところあり、現職を持続しつつも、昨年帰国した。日本をずっと外から見てきた彼女にとって、この「和の線香花火」の企画は、偶然とは言えぬ出会いだったに違いない。

私が彼女と初めて出会ったのは三か月ほど前。「ガウディの謎に迫る芸術紀行」という、ちょっとマニアックな旅行説明会のときだった。旅の案内人がバルセロナに住む友人でガウディ研究家の田中裕也氏であるため、JTBの旅を企画したN女史から、「ガウディと田中氏について語ってくれ」という依頼を受けたのだった。スライドを使って一時間ほど語らせていただいた。その会に出席してくれた彼女を、友人であるN女史から紹介されたのだった。ちなみに田中氏の紹介記事も旅のキャンペーンで書いたりしている。

そのひと月後、赤坂にある「水琴窟(すいきんくつ)フォーラム」で彼女と再会。今回の「和の線香花火」の企画を知り、彼女が何者であるのか少しばかり認識した。そして、その数週間後の4月末、バルセロナの地で合流。バルセロナだけでなくダリ美術館のあるフィゲーラス、ヨットを所有する友人のいるタラゴナ、ガウディの生誕の地であるリウドームスなどを共に旅して回り、彼女のポテンシャルに注目したのだった。旅には彼女だけでなく妹さん、そしてイギリスから合流した幼馴染みの舞台作家F君らもいて、賑やかだった。

彼女は私よりふた回りほど若い、親子ほど年齢差のある貴重な友人。今後の活躍に期待している。

C

気は心。とはいえ、
通じ合う心は一瞬にして消え去る。

追うは無用。とはいえ、
去るを追う幻(まぼろし)こそ希望。

よくわからぬまま、線香花火に火を灯(とも)す。

|

« 53円の幸福 | トップページ | 毎日三か月 »

コメント

和の日本、良いですね。
うるさいばかりの花火の中、静かにはねる線香花火は特に情緒に訴えます。写真もキレイだし夏の風物詩そのものです。
仕掛け花火は、薪能を連想させてくれます。

投稿: マンボウ | 2007年6月 4日 (月) 07時47分

線香花火の夕べとは粋ですよね。

打ち上げではなく、線香花火の風情を感じる子供たちが増えてほしいと思います。下を向いて線香花火に見入ったあとに、見上げると線香花火を逆さにしたような東京タワー。

これまたなんて絵になるのかと。

増上寺という場所を選んだ意味が少しわかりました。

投稿: 若だんな | 2007年6月 4日 (月) 11時04分

日本の線香花火は懐かしいね。
スペインにも似たものはある。
でも昔、日本で見た線香花火は最後の一瞬に火の塊ができてポタリと柄からちぎれ落ちて小さな花火大会が終わる。

投稿: ヒロ | 2007年6月 4日 (月) 16時19分

マンボウさん
今回の会で線香花火の良さをあらためて知ることができました。質の高い線香花火の光は少し違いますねえ。

若だんなさん
土曜日は来訪ありがとうございました。夕刻いっしょに出て、駅で別れて向かった先が増上寺でした。徳川家をまつる寺のそばにある東京タワーの存在感もすごい、ですね。

田中さん
スペインにも線香花火に似たものがあるんですねえ。知りませんでした。

線香花火が燃え尽きるまでは三段階あるそうですよ。

火をつけた直後、まず、ジャジャジャジャと勢いよく丸く「牡丹(ぼたん)」が咲くように花開く。それが落ち着くと、震える赤い火の玉が、ジジジーとかすかな音をたてながら、ジャッ、ジャッジャッ、ジャッ、ジャッジャッと「松葉」が飛び出す。松葉を出しつくすと、消え際を惜しむように細い花弁を弱く送り出す。この「消え菊」で線香花火は燃え尽きる。

牡丹、松葉、消え菊。今度、線香花火で遊ぶ機会があったら、そんな言葉を思い出してみるのもいいかもしれませんね。

投稿: kawa | 2007年6月 6日 (水) 00時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49806/15309525

この記事へのトラックバック一覧です: 増上寺の線香花火:

« 53円の幸福 | トップページ | 毎日三か月 »