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2007年6月30日 (土)

匿名の力

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国立競技場には何体かのモニュメントが置かれていますが、その唐突な存在が笑えるほど面白いんです。このモニュメントは、集まってくる人たちを、きっといつも横目で見ているに違いありません。

その日は小雨混じりの曇天でした。午前7時半、国立競技場に集まったのは三千人ほどのエキストラたち。

「劇場版を撮影するから集まってえ!」

というウェブ上に発せられた号令のもとに集合した『相棒』のファンたちは、それから午後6時まで嬉々として動きまわったのでした。

午前中には終わると思って参加したのだが、結局、お昼のロケ弁食って夕刻まで、国立競技場で過ごすことになりました。そこにいた三千人は、喜んで集まった人たちばかり。三千人分のそんな気持ちのかたまりの中に身を置いていると、いつもとは全く次元の異なる時間と空間が現れた気がします。

こんなことやってる場合じゃないだろ、と思いながらも、匿名であることをよくよく理解した群衆の一人となった経験は、匿名であることの意味を考えるうえで、非常によい機会となりました。たとえば、書評を匿名で論じなければ表現しきれない絶妙な距離感のある評論。あるいは、ガウディの宗教建築物であるサグラダ・ファミリア聖堂に設置される彫刻を、作家性を抑えて初めて表現できる落ち着いた彫像の表情、など、など。

丸一日仕事を棒に振っても代えがたい、貴重な体験でした。

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コメント

物事が上手く進まない時、「でも、映画の現場よりはましでしょ?」と、友人に言われることがあります。
お天気待ちなど、人力ではどうにもならないことも多く、あれを経験すると、本当に忍耐強くなります(笑)
それでもなぜ参加したいのか?というと、やはり、その現場にいる幸せが忘れられないからなんですよね。
あの空気を吸うことは、今はほとんどありませんから、いいなぁ~と、羨ましく思いました。

投稿: snowdrop | 2007年6月30日 (土) 14時32分

snowdropさん
十代のころから映画と深いかかわりをもってきたsnowdropさんとは違い、今回のエキストラが私にとっては映画の現場に身を置いた初めての経験でした。確かに、待つことばっかりでしたよお。もうちょっと段取りよくやれないんかい、と、思うことが何度かありました。でも、そうなんですよね、好きで集まっているかたまりの中にいれば、そんなこと、どうでもいいんだなあ、って、実感しましたよ。

投稿: kawa | 2007年7月 1日 (日) 03時07分

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