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2007年6月23日 (土)

狐のおかげ

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       <日本橋人形町の神社>

 どうしようか、と右往左往していたところ、

「この本はお読みになりましたか?」

と、いうメールが友人I氏から届いた。

 「ガウディの謎」でガウディ本の紹介を始めたのだが、書評の書き具合がしっくりこないため、更新できないでいた。そんな矢先だったので、たいへん助かった。

 その本のタイトルは、『野蛮な図書目録』(洋泉社、1996)。
 書評集である。書評は1ページに1冊のペースで、なんと百九十九本も収められているではないか。「日刊ゲンダイ」の連載コラムだったため、文字数が原稿用紙2枚分と短い。にもかかわらず、本の深さを十分に味あわせてくれる。珠玉の書評として多くのファンがいたらしい。知らなかった。
 著者は狐(キツネ)。もちろん本名ではない。匿名である。「日刊ゲンダイ」というあまり家庭では読まれない新聞に、書評を匿名で書くというスタンスを、狐氏はよくよくわきまえておられたようだ。

 紹介してもらったこの本だが、すぐには手に入らなかった。ウェブ書店をのぞくと、かろうじて「ユーズド本」として何冊かリストアップされている。到着まで一週間ほどかかる。しかもユーズド本では気が乗らない。それでは、と、書店と古書店に当たってみた。ところが、あつかってない、という。
 それでも図書館がある。日本橋図書館まで足を運ぶ。在庫検索すると京橋図書館に保管していることが分かった。パソコンの端末で簡単に予約完了。京橋図書館から日本橋図書館に転送されるまで遅くとも二日くらい。
 この著者に興味をひかれた私は、その二日が待てなくなり、図書館からの帰り、書店に飛び込んだ。狐氏ご本人が書いている新書だったらきっとあるに違いない、と。

 果たして、以下の2冊を購入し帰宅す。

書評家<狐>の読書遺産』(山村修、ちくま新書、720円)

<狐>が選んだ入門書』(山村修、文春新書、740円)

 こちら二冊を先に読んだ。二冊ともに文字数を限定して書いている。『書評家<狐>の読書遺産』は5ページ、『<狐>が選んだ入門書』は8ページ。飽きる間もなく、次々と読み進んでしまった。『野蛮な図書目録』と比較して5倍から7倍と文字数が多い分、引用文も豊富で展開も広がり、より深く味わえる。また、<狐>という匿名性を取っ払った山村氏からの肉声も聞こえる。

 残念なことだが、山村修氏は昨年、すでに逝かれていた。
 本を深く味わうことが山村氏にとって生きることの中心であった、と評する方もいらっしゃる。まったく同感だ。狐と山村氏の書評を、これからじっくりと読ませてもらおう。
 これからガウディ本を紹介するとき、本を紹介することを主眼に置くのはやめた。まず、本を味わい、ガウディ建築を味わうことから始めようと思う。

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